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口腔機能発達不全症について

2018年に疾患名が保険収載された「口腔機能発達不全症」というものがあります。

病態としては食べる機能や話す機能、その他の口腔の機能が十分に発達していないか、正常にその機能を獲得できておらず、摂食機能障害の明らかな原因疾患がなく、口腔機能定型発達において個人的因子あるいは環境因子に専門的な関与が必要な状態とされています。

発達不全とは全く機能していないわけではなく、乳幼児期や学童期の口腔機能発達が正常な発達機能に比べて少し低く、機能獲得がやや遅れている状態だが早期に発見して適切な指導を行うことができれば発達機能の修正ができ、今後の発達を見込むことも可能です。

病状として咀嚼や嚥下がうまくできない、構音の異常、口呼吸などが認められています。これらは患者さん自身には自覚症状がない場合が多いです。

保険収載から2年以上たった現在、上記の疾患に取り組んでいる歯科医院は多くはありません。それらをいくつかあげると「小児の口腔機能の見方が分からない」や「口腔機能への対応のための具体的なスキルを学んでいないこと」などがあります。1つ目の場合ですと小児には成長と発達があり、そこに個人差が加わることが症状の判断を難しくする要因になっています。2つ目の場合ですと日本歯科医学会の「小児の口腔機能発達マニュアル」には口腔機能改善のための対応法の1つとしてMFT(口腔筋機能療法)が挙げられています。MFTは大学教育の中に取り入れられてはいますが多くの歯科医師は実践的なスキルを学ぶ機会がありません。口腔機能発達不全症は新しい疾患名ですので誰も大学では習っていません。そのため、歯科医師の中には治せる自信がないから介入しないという選択肢を取っている人も少なくはありません。

前提として日本歯科医学会が行った「子供の食の問題に関する調査」の中で未就学児の保護者の過半数以上が「子供の食事について心配事がある」と答えており、またこれに対して歯科医師の8割以上が「改善・対処すべき」と答えているものの実際に対応している歯科医師は約4割にとどまっています。現状では保護者が食事についての相談を歯科医院に持ち掛けられていない実態が浮き彫りになっています。しかし「今後取り組む予定である」と答えた歯科医師は約3割であり、今後口腔機能の問題に関心を示し、必要性を感じていく歯科医師も増えていくことも予想されます。

口腔機能発達不全症に取り組む意義としては3点あげられます。1つ目は「口腔機能を正しい成長に導くため」、2つ目は「顎顔面・咬合の骨格性異常の予防、正常歯列形態を育成するため」、3つ目は「正しい生活習慣の情報提供のため」です。

1つ目に関して、口腔機能は他の身体機能と同様に、乳幼児期と学童期においてその機能を獲得し、ある一定レベルまで発達した後、成人期になった時にはその機能を維持し、高齢期に加齢とともに低下していきます、しかし、小児期に機能が発達できずに口腔機能のレベルが一定以上に到達できなければその後の成人期に口腔機能を十分に維持できなくなり、高齢期にはその機能を回復・訓練できずに更なる機能低下を引き起こす可能性があります。そのため小児期のうちに口腔機能の発達を正常な形にする必要があります。2つ目に関して、歯は内側と外側から支える口腔周囲筋の均衡のとれた場所に配置して歯列を形成します。筋力のバランスが悪い状態が長期に渡って続くと、歯軸は傾斜し、歯の移動が起こります。更には小児の顎顔面骨は強固ではないため、骨格的な顎顔面の変形をきたすことがあります。このような骨格性の歯列・顎顔面の不正への移行を予防し、正常な歯列を形成する必要があります。3つ目に関しては、口腔機能発達不全症に取り組むことは日常的な姿勢や正しい食べ方、鼻呼吸をすることなどの生涯に関わる正しい生活習慣の知識やスキルを伝えることに他ならないからです。

こちらも口腔機能低下症と同様に、口腔機能発達不全症の検査をして診断された場合、診断結果に基づく管理計画の立案を行います。例えば食べる、話す、その他のどの機能でどういった内容の項目が口腔機能発達不全症に該当するかによって個人個人で内容が変わります。そしてその立案した計画を患者だけではなく保護者へ今回の管理計画を説明し、同意をもらう必要があります。患者の同意を得たのちに毎月の口腔機能発達不全症の訓練・指導を行っていきます。半年後に再評価をし、改善がなければ管理計画の再立案、もしくは指導の中止を行わなければなりません。一連の取り組みを行い、口腔機能発達不全症からの回復を目指していきます。

口腔機能発達不全症にと診断されたまま放置しておくと前述したとおりに成人期以降も口腔機能を維持することは難しく、口腔機能低下症や他の疾患などにかかる可能性も高くなると予想されます。早期にこの疾患を見つけて、子供の未来を守っていくためのサポートを心がけていきたいと考えております。

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